コレクション: 荒賀 文成(荒楽窯)

text: Yukie Masumoto photo: Yuko Okoso
(Discover Japan 2024年10月号より引用、一部加筆)
Special Thanks: うつわ祥見 KAMAKURA

京都に生まれ育ち、腕を磨いてきた荒賀さん。赤土の素地に白化粧し、釉薬をかけて仕上げる粉引で知られる。 「粉引はかたちができてはじめて白で魅せることができる」との師匠の言葉を胸に、美しい肉体をもつ舞踏家が白をまとうような気持ちで作品に向き合う。まずはかたちありき。彼のうつわを並べてみると、花のように自然なのはそのためだ。いまにもほころびそうなつぼみ、満開の花、散って川面を流れる花びらのようで、集合してもちっとも窮屈ではない。

粉引を手掛ける作家は、それぞれの白を表現するために白化粧の組成や焼き方を工夫する。父親が韓国人で、韓国に自分のルーツを感じるという荒賀さんが目指すのは、李朝の粉引など古い時代の柔らかな白。最近は素焼きしてから白化粧をする作家が多い中、土に白化粧を施してから焼く生化粧でクリーミーな質感を出す。

大切にしているのは、使ううちに貫入が入り、育っていってもなお愛着がわくうつわであるということ。粉引のうつわは、きれいな白を長く保つために、使いはじめに米ぬかで煮るのがよいとする向きもあるが、荒賀さんは違う。水にさっとくぐらせるぐらいにして、どんどん使ってほしいという。粉引は貫入が入って古い焼物のような風合いに育った様子が美しいと信じているからだ。近年、荒賀さんは使い込んで生まれる古色の美しさをイメージし、あらかじめ貫入のようなひびが入った「ひび粉引」を発表した。

また、李朝の黒高麗を意識したという黒釉のうつわや花入もアンティークの雰囲気がある。荒賀さんのうつわには、京都ならではの信頼感のようなものがあると祥見さん。薄過ぎずにほどよい厚みをもった縁取りの安定感、キュウリのぬか漬けがごちそうになる上級のうつわ使いを実現する色気のある白、いろいろな角度から見たときのフォルムの美しさ。思わず見とれてしまうような大人の魅力を備えている。

<作家のご紹介>
荒賀 文成(あらが ふみなり)

1972年、京都府生まれ。京都府立陶工高等技術専門校研究科を卒業し、北白川銀月アパートにて「荒楽窯」を開窯。現在は京都・八幡市にて作陶。柔らかく、自然な曲線の粉引が特徴的。

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掲載誌
Discover Japan 2024年10月号「自然とアートの旅。」/ダブル特集「九州」