手仕事が生み出す一生もの。使いはじめから少しずつ色が変わる、「銅のやかん」

使い込むと次第に左の渋く味わい深い色へと変化していく。

日本各地の職人とともに暮らしの道具を生み出し続ける「東屋（あずまや）」。

「つくり手をどれだけ繁栄させられるかっていうのが東屋のテーマ。事業目的は手工業の振興なので、東屋ブランド云々じゃないんですよ」と代表の熊田剛祐さん。ものづくりをひとつのプロダクトを奏でるオーケストラとしてとらえているからこそ、東屋の製品には製造元、原型師、デザイナーなどのロゴが自社ロゴとともに刻印されています。

「うちは定番屋だから、同じものを同じところでずっとつくり続けていることが多い。孫の代まで胸を張って使えるような製品を生み出せば、それが職人の技術の蓄積にもなるという考えです」。

そう話す熊田さんが新潟県燕市の銅製品メーカー「新光金属」とともに生み出した「銅之薬缶」も、発売から約20年のロングセラー。「銀ろう付け」と呼ばれる接合技術を施した注ぎ口は空焚きをしても壊れにくいのが特徴です。もう一つの大きな特徴は、一般的な銅製品には酸化防止のため石油由来のニスが塗られていますが、銅之薬缶の表面はむき出しの銅のまま、という点。

「銅は変色がおもしろい。うちの薬缶は使いはじめから少しずつ色が変わるからずっとかわいいし、空焚きによって真っ黒になったとしても研磨スポンジでこすれば戻りますから」と、熊田さんは語ります。

新光金属の「新光堂」と、東屋のロゴの双方を取っ手の前後に刻印。鋲がゆるむと取っ手が倒れることがあるため、現行品は取っ手が片側には倒れない仕様に変更されました

合理的な考えから生まれる東屋の製品には「あるべきものが、あるべきところに、あるべきようにある」といった、数百年先をも見通したこだわりが随所にちりばめられています。「合理性がないと美しくないと思っているのかな」。そう自問自答するようにつぶやいた熊田さんの言葉こそ、東屋が掲げるものづくりの神髄と言えそうです。

「銅之薬缶」は、満水で2リットルを超える大容量にもかかわらず軽やか。むき出しの銅の美しい赤褐色から、渋く味わい深い風合いへと育てていく楽しみもあります。[詳しい記事はこちら]

- text: Natsu Arai　photo: shiho Akiyama　Discover Japan 2025年2月号より引用、一部加筆

＜メーカーのご紹介＞東屋（あずまや）

1997年創業。各地の信頼できる手工業の職人と二人三脚で暮らしの道具を生み出し、発信。ロゴマークは篆刻の白文で「東」を表現しています。

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Discover Japan 2025年2月号「温泉のチカラ」

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