素材と向き合い、試行錯誤。釉薬が生み出す色の世界

田村一さんが陶芸の世界に入ったのは大学時代。サークルでうつわづくりにのめり込み、そのまま東京で作家活動を開始した。

そこで田村さんが着目したのが天然の釉薬。きっかけは、気鋭の実力派酒蔵「新政酒造」とのコラボレーション企画にあった。

学生時代から自然由来の釉薬を試してきたため、ある程度扱い方は把握していた。実際にもみ殻を焼いて灰をつくり、アク抜きを何度も行い、ようやく完成したもみ灰釉で発色の具合を幾度となくテストしていく……。この年単位に及ぶ地道な作業にめまいがしたが、同時に、合成された素材では経験し得ない手間と出来上がりの不安定さを楽しんでいる自分がいた。

天然の釉薬を使いはじめて5年。いまでは釉薬の原料となる灰が各地から届く。いうなれば「灰ネットワーク」が年々拡大している。雑木の灰から旅館の囲炉裏の灰まで種類も多彩だ。[記事の全文はこちらから]

こちらの「集水 盃 兎禾」は、もみ灰を使った「兎禾」シリーズ。ころんと収まりのいいかたちで、日本酒がよく合う。兎の毛のような、稲穂のような幻想的な景色を楽しんで。

text: Misa Hasebe　photo: Norihito Suzuki - Discover Japan 2025年4月号より引用、一部加筆

＜作家のご紹介＞田村 一（たむら はじめ）

早稲田大学大学院修了後、東京で作家デビュー。2002年に栃木県益子町に拠点を移し制作。2011年より地元・秋田県で作陶を開始。

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掲載誌

Discover Japan 2025年4月号「ローカルの最先端へ。」

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